浜口さんのスイカ
陽三さんのスイカ。
哀しいスイカやね。生きてるんやね。
スイカはみずみずしく透き通っている。
炎のようにメラメラと赤くて、命がしたたっている。
このガケのように切り立ったスイカは、
どこか、まっさらな傷口みたい。
あたしは、この哀しいスイカを部屋に飾った。
となりでは、Billyが真っ赤な炎のように燃えてる。
抑えきれないんだよ、彼は。
傷ついても、リスクを負っても、どうしてもやりたい。
この空間だけ、煮えたぎってる。
誰もが知ってる、あの「血」がドクドク流れてる。
何も知らないミッフィーが、となりで首をかしげてる。
これは、浜口さんの「毛糸と編み棒」。
闇の中に、編み棒が突き刺さっている。
夜中に水を飲みに起きて、ふと目にした光景のような。
昔見た、母の編みかけの毛糸が入ったカゴのような。
強い不在感。時間がゆがむよ。
編み棒を動かしていた人は、いなくなってしまった。